巳影の計算する寿命までに要する命の値段

昔経験した男話 

かなり、複雑な男女の恋愛をみてきた。

私は、かつて、朝帰り常習犯だった。その頃出会った友の話です。

私は、とにかく酒が好き。朝まで酒を飲むのが普通だった20代。何杯とかではなく、何本飲んだかで日記を書いたほうがいいのだろう。

私には、酒の相手がいた。同じく酒が好きな酒友の女友達。

女友達には、もう一人女友達がいた。あまり、酒には強くないおとなしい子だった。

女友達には、二人の男友達がいた。一人は、サービス業を営む中堅会社の御曹司。もう一人は、まあ似たようなもんで、建設会社?を営む会社の御曹司。

女友達には、彼氏がいた。彼氏とうまくいってなかったようで、悩んでいた。まあ、原因はある。彼女は、彼氏の兄とも付き合っていた。

彼女は、弟の彼女であり、弟の兄の彼女でもあった。

私が、なぜ?彼女と付き合うに至ったか?

近付いてきたのは、彼女からだった。

見た目 育ちがよさそうに見えた。と彼女が、後に、心の言葉で、私に言ってきた。

彼女は、「金持ちにしか興味のない女」だった。

正直いうと、彼女の心の中は、「どろどろ」していて、巳影は、近付きたくなかった。

なんで、彼女は、金に執着するのか?一度、家に遊びにいったことがある。母親が出て、私と意気投合する。よくしゃべる母親だった。

うちの母に、少し似ていると感じた。「執着の塊」という点で・・・

「あの子は、金持ちの男をみつけて、結婚させたい」そういつも言っていた。

ずっと、小さい頃から、貧しい生活をしてきたこと。娘には、金に困らない生活をさせたい。だから、結婚相手は、資産家にしろと、教えこんできたと言っていた。

ああ。なるほどね。それでか・・・(この母親は、なぜ?私に、そこまで話せたのだろう?いつも、それが不思議でならなかった。)

巳影は、よく計算をする。巳影の寿命までに要する金の計算だ。

ただ、生活費だけを念頭に入れるなら、寿命が、55歳だとして、550万円あれば、寿命まで生きれる。

55歳以上を設定していないのは、巳影の家系は、「癌を発症しやすい家系」なのだ。

父の実家は、二人 癌で死亡している。

母の実家は、二人 癌で死亡している。

まちがいなく、巳影は、癌で死ぬ。

延命治療は、巳影はしない。尊厳死を望む。

癌の発症から進行、死に様は、目に焼きついてる。

尋常ではいられない死の苦しみが、目の前で通り過ぎていく。

苦しみもがいて死ぬのが、癌の死だ。

どんなに延命治療をしても、無駄と知る。ただ、あの、人ならぬ形相で死にゆく様を遅らせるためだけに過ぎない。

あれを視た者ならわかるはずだ。

金のない苦しみと 癌で死に行く苦しみは、比べようがない。

生きたいなら別だ。生きるためには、金がいる。

癌から逃れるためにも、金はいる。

彼女の話に戻ろう。

彼女は、金持ちと結婚した。彼女が付き合ってた彼氏は、建設会社を起していた。兄弟で。どちらかを選ばなければ、結婚はできない。

たぶん、最初から、狙っていなかったのだろう。キープ。おそらく。

彼女には、男友達がいた。二人。二人とも御曹司。安定した生活を望める結婚相手。

彼女は、男友達の一人と結婚した。お金に苦労しない生活を手に入れた。

その後の彼女のことは、知らない。

私は、この彼女との付き合いがあった頃のエピソードを、以前書いたことがある。「殴り殺されるところだったエピソード」として。

以前の巳影なら、彼女を理解することは出来なかった。

「そこまでして、金を得ても、維持しつづけることは、難しいのに・・・」

「巳影にとって、寿命が尽きるまでに必要とされる金は、550万だ。それ以上あっても、もうすでに死んでいる。あの世まで金は持っていけない。」

「彼女は、持って行きたいのか?」

「最期に息を引き取る時、何が残るんだろう?こいつ」って思ってた。

今は、理解できる。

母を 癌で亡くしたから。延命治療はしても無駄だと言われた。大学病院の医師から。

「そんなに金ないんでしょ?娘さんの将来のためにも、残しておいたほうがいいんじゃないの?このまま、何もしない。それが、あなたのためだよ。」

治療ができないことはわかってた。

放射線治療には、照射回数が限られている。医師はそういった。

限界を超えた放射治療はできない。

人にとって、「幸せとは、何を持つことが幸せなのか?」考える。

私は、金を得る幸せが、幸せだと思っている女に出会った。

私は、健康を得る幸せが、幸せだと思い知らされる経験に出会った。