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私の片腕

サブマスさんの仕事は、正直わかりません。

私は、サブを背負った経験がありませんから。

なので、私の「腹心の部下」だった男の話をします。

 「俺の女になれ。おまえは、マスターのままでいい。俺が、影で操ってやるから。」

そう言ってきた男。私の「腹心」です。これが^^

彼は、最初は、女性でした。この告白をされるまでは・・・

私のギルドは、メンバー一人一人、出会いがあります。一人も募集で集めた人はいません。その中の一人が、彼というか、彼女でした。

メンバーとはいいません。当時は、「仲間」と言っていました。ので、「仲間」という言葉を使いますね。

当時の仲間は、彼女を含め5人いました。

彼女は、とても人当たりのいい女性でした。しっかり者でしたし、私よりも「マスター」にふさわしい人でした。

私が、「マスター」に選ばれた理由は、よくわかりません。

私が、以前所属していたギルドを抜けて、これからどうしようかなあ。と、ぼけ〜としていた時、出会いをきっかけに、毎日遊ぶようになっていたいつものメンバー4人が私の前に集まってきて、「ギルド起こそう」「あいちゃ、マスターなれよ」なんて言い出してきて、気がついたら、「マスター」になっていました。

ギルドの名前を決めるときも、みんなで決めようと言ったのですが、私に任されました。

私は、「愛」という言葉が好きなので、わきあいあい。楽しくみんなと過ごせるように、願いを込めて、こう付けました。

ギルド「あいあい」

私は、無能でした。「マスター」というのは、どんなことをすればいいのか?わかりませんでした。

いつものように、仲間を集めて、遊んでばかり。

彼女は、仲間の懐状態を気にかけながら、「今日は、お金集めのための狩りにします」だの、「今日は、ハルさんがほしがっているレアを狙います」だの、いつも、人のことを気にかけて、動いてくれていました。

時には、その世話の焼き方が、度を超えてしまうのが、難でした。

あまりに、口うるさく管理されるので、仲間の中に文句を言い出す人がでてきました。

「あいちゃ、なんか言ってよ。」と言って来たりして・・・

彼女が、どれだけ自分を犠牲にして、仲間のために頑張っていたか。そのときの私は、彼女に甘えていることに気がついていませんでした。

「レベルに応じた狩場で、狩りをするのが、今は優先すべきことだと言うことはわかるけど、時には、力試しするのもいいのではないかな?たまには、「能率」優先の狩りよりも、純粋に「楽しむ」ための狩りを優先してもいいのではないかな?」と、彼女に意見しました。

彼女は、応じてくれました。条件つきで・・・

「やってみたらわかりますよ^^。たまになら、いいですが、今は、その「たまに」さえ入らないレベルです。一度だけですよ。試すのは。無理だとわかったら、以後レベルがあがるまで、「能率」優先でいきます。いいですね」

とね。。。

彼女は、口うるさいけど、厳しかったですけど、とても、信頼できる部下でした。

私は、お山の大将でした。彼女は、有能でした。だから、プライドが許せなかったと思います。

こんな「無能」なやつの下で、俺がなんで、こんな苦労をしなければいけない。とね。思ってたかもしれません。

彼女が、男であることを告白したとき、それがわかりました。

「男としてみたことがない。断る。貴方の勝手にはさせない。」と、答えました。

「おまえには、絶対無理。無能だから^^」と、答えられて、悔しいと思いました。

私は、負けず嫌いなので、「絶対見返してやる!」と心に誓いました。

彼女(彼)とは、その後、仲間のいないところで、何度も意見交換(論戦?)を繰り返しました。

「俺は、いつでもこのギルドを乗っ取れるからな。おまえに、何かあれば、遠慮なくいただくよ^^」と、いつも言われてた。

「何か」なんて、起こるはずないと思ってた。

あるとき、一人の男性プレーヤーに出会いました。文字だけの世界なので、雰囲気なんて伝わらないと思われますが、「とても危険な人」だと感じました。

私の中の「俺」が、「あいつには、関わるな」と言ってきてた。

でも、相手が、私に興味を持ってどんどん近づいてきました。

彼は、ギルドの集まりに顔を出してきました。会議中だというのに、遠慮なく割り込んできて、意見を言ってくる。自己中心的。危険すぎ。彼は、私に対する興味というよりは、私がマスターをしているギルドに興味がありました。何か企んでいたことは、感じてました。仲間は、「あいつは、やめとけ。」といいました。

どうして、あらがえなかったんだろう・・・と、思います。

私は、仲間の注意を聞かず、彼に走りました。

何か企んでいる。そう感じているのに、心を止められない。

だけど、彼が、ギルドに近づくことだけは、避けなければいけないと思い、仲間との接触がない場所で、会うようにしました。

その結果、私は、ギルドを放置しました。

私は、仲間を失望させました。

私の片腕だった男は、このとき、動きました。「乗っ取る」計画を実行しました。

あいつは、何も言いませんでした。

「あいちゃだから、ついて来たのに・・・、あんたの我が儘には、もう付き合い切れない!」

あいつ以外の仲間たちから、言われた言葉。もう9年たつのですが、忘れられません。

男性プレーヤーとは、ほどなく別れました。彼の興味は、「私」ではなく、「ギルド」にあったからです。

私は、たった一人になりました。

その後、放浪生活。1年の引退。復帰を繰り返し、3年の歳月がたちました。

偶然でした。以前の仲間と再会しました。

仲間から、彼女(彼)が、ギルド「あいあい」を守っていることを知らされました。

「あの馬鹿・・・」と、思いました。

乗っ取ったなら、自分のギルドを新たに起こして、「あいあい」という名を捨てればいいのに、と思いました。

「残すなら、いっそのこと、砦取って、「あいあい」の名を残してほしいね^^」と、仲間に言ってしまった。

1年後だったかな。

砦を取ったギルドが、毎週掲載されるサイトがあるのですが、そこに、「あいあい」の名が、掲載されていました。

とても、嬉しかったです。とても、悔しかったです。

とっても、後悔しました。

あいつに、全てを背負わせてしまったことを。

彼は、いつも、憎まれ口を叩いていました。

「いつでも、乗っ取るぞ」というのは、私のちゃらんぽらんなところを、わかっていた彼だから、彼なりの厳しさで、私に「マスター」としての自覚を持たせようとしていたのだということ。

「俺が、影であやつってやる」というのは、私が、「マスター」という肩書きの重さに、つぶれかけていたから。一人で抱え込むなということ。

仲間に言った一言が、彼に伝わったかわかりませんが、彼は、砦には興味がない人でした。人と人が戦うイベントには興味がありませんでした。なので、砦を取ったことが、信じられませんでした。

私は、「マスター」という重荷を、彼に残しました。

彼が、「あいあい」という名を、捨てようと思えばできたのに、しなかったのは、まわりの仲間への配慮もあると思います。

私が、「マスター」の仕事に、「ギルドを解散する決断を下す」という仕事を加えるのは、後に残された者に、名を背負わせないためです。

サブマスは、とても大変なお仕事だと思います。

上からは、突付かれ、下からは突き上げられ、胃が痛くなる人が多いというのは、わかる気します。

私は、思います。

「サブマスさん。マスターが、本当について行けない。こいつは、無能だ。馬鹿だ。あほだ。と思ったら、遠慮なく、マスターを捨ててください。そして、そんな無能なマスターの元で、苦しむことが目にみえているメンバーのために、あなたが乗っ取る決断を下してください。」

これが、サブマスさんに向ける義理ですが、愛のメッセージです。